2008年6月30日月曜日

晴間は白

夏まだき
かけ上がる階段
発車ベル
開いた扉
夏の冷風扇

(『六月の心』(出版未定))

2008年6月29日日曜日

桜桃は桃

夏の風
雨の谷間に
機を図り
桜桃(もも)の匂いと
共に混じりて

(『メス犬のひとりごと』(出版未定))

2008年6月28日土曜日

文脈は青

文脈も
文脈のなかにありけり
テクストを読む
その壮大さ

(『六月の心』(出版未定))

忘却は白

飲みながら
昨日のうたを
忘れけり(笑)
梅雨の渋谷の
我らが一期

(『教室のうた 1』(出版未定))

2008年6月26日木曜日

初心は無

初心に
やれ
帰れという
その
初心は
初心の
ときには
分からじや

(『酔っぱらいのうた』(出版未定))

2008年6月25日水曜日

鼻先は闇

夕まぐれ
うしろを歩く
那のはなが
宵にまぎれて
風に揺らぎて

(『飼い主の戯れ言』(出版未定))

2008年6月24日火曜日

庭球は緑

あずまやの
池で飼われし
折りにみつ
錦の鯉の
瀧を昇るや

(『アルトワの妙』(出版未定))

2008年6月23日月曜日

波紋は白



あさぼらけ
湾に臨んだ堤防で
波をみる父
地球(ほし)の脈取り

(『セニョール・ホニの涙』(出版未定))

2008年6月22日日曜日

花色は桃



色に酔う
梅雨の雫の花びらに
淡い口づけ
終わらぬ温さ

(『R−18の疑問』(出版未定))

2008年6月21日土曜日

地下は黒



空の色
都市(まち)の匂いが
見えずとも
苦きコーヒーの
味の広がる

(『スペイン恋歌』(出版未定))

2008年6月20日金曜日

黄色は赤



赤黄色
どんな国かときかるれば
赤黄色なり
食事や旗や

(『スペイン恋歌』(出版未定))

2008年6月19日木曜日

手紙は紺

光の前に生まれし
ロゴスは
肉体の軛(くびき)を
気にも留めずに

(『死刑囚のつぶやき』(出版未定))

2008年6月18日水曜日

川面は黒

神田川
梅雨の重きに
ヘドロを湛え
黒き川面に
岸辺は若緑(みどり)

(『六月の心』(出版未定))

2008年6月17日火曜日

宵口は朱

飲んじゃダメ!
とはまさか言わないけれど
かまって欲しい
酔うその前に

(『メス犬のひとりごと』(出版未定))

2008年6月16日月曜日

採点は赤


神に向かい
天を出しゆく
われの手は
何の故あり
それに従う ?

(『セニョール・ホニの涙』(出版未定))

2008年6月15日日曜日

弥勒は白

いつぞやの
宵の薄闇
忘られじ
369(弥勒)の招き
涅槃の丘に

(『横尾探偵の怪』(出版未定))

2008年6月14日土曜日

絵画は赤

冒険王
赤と緑の不安を越えて
時のY字路
君を待つ家

(『横尾探偵の怪』(出版未定))

2008年6月13日金曜日

線路は銀

梅雨の間の
陽に照らされて
不機嫌に
どこまでもは続かない
線路

(『六月の心』(出版未定))

2008年6月12日木曜日

梅雨は灰

曇り空
コントラストの
単調が
地平とここの
アスファルトさへ

(『セニョール・ホニの涙』(出版未定))

2008年6月11日水曜日

記憶は黄

あなたもね
彼と一緒で
ものごとを
斜めから見るね、
と鬼籍の師

(『セニョール・ホニの涙』(出版未定))

2008年6月10日火曜日

涼風は水

梅雨まだき
窓より来る涼風の
騒音(おと)を伴い
色を帯びたる

(『セニョール・ホニの涙』(出版未定))

2008年6月9日月曜日

生死は白

生き死にの
次の日のかの
場所を行き
そそくさと歩く
流れに乗って

(『セニョール・ホニの涙』(出版未定))

2008年6月8日日曜日

水槽は青

悠々と飛びゆく
青の中
そこは
白き意識の頭上に浮かぶ

(『六月の心』(出版未定))

2008年6月7日土曜日

想像は金

想像する
感じる力を
探し居る
そばにか弱き小犬の寝息

(『飼い主の戯れ言』(出版未定))

2008年6月6日金曜日

憤怒は赤

待てやそれ
為さざる内に
ひと呼吸
さすれば怒りも
幾ばくか鎮まらん

(『酔っぱらいのうた』(出版未定))

2008年6月5日木曜日

回転は水

まわれ
くるくるくる回れ
お空見て
回れやまわれ
くるくるくると

(『六月の心』(出版未定))

2008年6月4日水曜日

留守は無

待ち侘びつ

居らぬ我らを

待ち侘びつ

帰る我らを

待ち侘びつ居り

(『飼い主の戯れ言』(出版未定))

2008年6月3日火曜日

雨空は鈍

雨 滴
雨 水 雨雨
滴 雨
雨 雨あめ 我
傘の内

(『武蔵野』(出版未定))

2008年6月2日月曜日

葱焼は茶

お好み焼きを切りながら
教え子の話を聞き居り
ヘラがコツコツ

(『教室のうた 1』(出版未定))

2008年6月1日日曜日

道頓は赤

閉じてゆくものへの
喝采限りなく

終わりある
その救いと悲哀

(『戎の憂鬱』(出版未定))