凝視は桃

朝十時
ねだる散歩に
見詰められ

動かぬ表情≒透徹した言葉

（『飼い主の戯れ言』（出版未定））

道行は赤

赤
赤で唸るは
消防車
闇の道行き
燃やせよとばかりに

（『一月は一時に』（出版未定））

窓数は銀

夜
無数の窓の光る
街にて
無数の呼吸の数を
数えて

（『セニョール・ホニの涙』（出版未定））

酒呑は朱

我
酒を飲む
夕暮れ時間
酒を飲む
嫁のはなしを
つまみつまみに

（『一月は一時に』（出版未定））

晴間は白

雲晴れて
覗く光に
水色を
楽しむように
泳ぐ飛行機

（『一月は一時に』（出版未定））

雪降は白

酔抜けて
大の言葉を吐く
君も
鬢のそこここ
歳の雪降り

（『セニョール・ホニの涙』（出版未定））

民主は白

永遠なる
人性をさらに
越えてなお
保ち続く
白
エーゲ海の

（『ギリシャ夢想』（出版未定））

空瓶は茶

うなされる間に
過ぎた暮れ正月の
酒のかおりを
残す空き瓶

（『一月は一時に』（出版未定））

暗暮は黒

窓ながれ
流れる窓の
闇暗し
暗き向こうは
暗きか暮らし

（『セニョール・ホニの涙』（出版未定））

未知は白

知っているのに
知らない
知らないのに
知っている

知っているのに

（『一月は一時に』（出版未定））

大仏は黒

蓮の上から
我ら見る
変わらぬ目
見あげる方は
終ぞ同じからずして

（『一月は一時に』（出版未定））

一日は橙

変わらずに
昇った日の内
祝う間に
今日もまた冬
日の入り早し

（『一月は一時に』（出版未定））