花見は桜

春、桜
お酒を囲み
見る花の
花の香りは
絶えず驕らず

（『三月は燦々と』（出版未定））

取捨は紫

詩を選（よ）る
書き止められた
瞬間の
リズムと景色
諦めきれず

（『三月は燦々と』（出版未定））

日光は黒

古の匠の築く
木の色は
言葉の紡ぎに
似たりて
目眩

（『三月は燦々と』（出版未定））

春眠は白

つと不意に
降りくる眠り
まぶた指し
春であろうが
朝であろうが

（『メス犬のひとりごと』（出版未定））

日光は水

照らされる
手彫り唐草
細密の
栃木で見るは
などかグラナダ

（『三月は燦々と』（出版未定））

解離は無

飛行機の
雲を突き抜く
その瞬き
ロゴスの
言葉を離るるを聴き

（『スペイン恋歌』（出版未定））

偏光は灰

光る雲
変わる青空
仰ぎ見て
時と影井の
神に驚く

（『三月は燦々と』（出版未定））

夕歩は緑

夕歩き
上着一枚脱ぎ捨てて
早咲きの花
独り占めして

（『三月は燦々と』（出版未定））

焼鳥は黒

タンとハツ
カシラ砂肝
カワにシロ
ツクネはタレで
けむりモクモク

（『三月は燦々と』（出版未定））

雨後は水

雨上がり
歩きあるいて
となり街
水溜まりにも
映る春ぞら

（『三月は燦々と』（出版未定））

国籍は緑

赤や青
黄緑えんじ
桃に白
黒であっても
黒くない黒

（『セニョール・ホニの涙』（出版未定））

いつでも、いつまでも様々でありたい気持ちを込めて。

河津は水

散る前の
さくらは赤く
散る後の
青き自分を
考えず居り

（『三月は燦々と』（出版未定））

会話は黒

知の果ては稚
分かりきったこと

（『セニョール・ホニの涙』（出版未定））

老梅は桃

老梅の
咲かす力や
その色を
覧ずるまえの
涙をおぼゆ

（『三月は燦々と』（出版未定））

予報は白

晴れの次
曇りのち雪
予報あり
報せの寒さに
凍えて寄って

（『三月は燦々と』（出版未定））

快晴は青

布団干し
植木水やり
床掃除
三月
晴れ間
朝
大忙し

（『三月は燦々と』（出版未定））