頻飲は赤

酒の音は
幾年前の
若岩の
抱く滑りを
富めど流して

（『六月の六角』（出版未定））

冷房は白

夏調べ
スポットライトの
強烈に
低く唸るは
冷房の風

（『六月の六角』（出版未定））

金色は金

宵口の
ビルの光に
照らされて
手元のビルも
金色陽色

（『六月の六角』（出版未定））

似顔は茶

嫁ぎ来た
ペットショップの
あんちゃんに
父親似だと言われた犬
ぬ？

（『六月の六角』（出版未定））

屹立は白

並立つ
固き壁らよ
なぞよそれ
中の暗さを
空に託さん

（『六月の六角』（出版未定））

寝枕は水

寝る頬と
枕の形を
整えて
夢の扉を
やわりと押せば

（『メス犬のひとりごと』（出版未定））

楽器は黒

銀の弦
あの頃聴いた
音をなぞりて
十五の指を
動かしてみる

（『高中正義はいつ？』（出版未定））

切株は茶

切り株の
上に芽生えた
命見て
傍らの犬を
儚げに
夏

（『六月の六角』（出版未定））

籠中は夏

メルセデス
ビーエムオペルも
いいけれど
週末に乗る
チャリンコの味

（『メス犬のひとりごと』（出版未定））

崩壊は白

崩れる
崩れる
この細胞とこの形
熱き蒸気に溶き流されて

（『メス犬のひとりごと』（出版未定））

久飲は赤

沖縄の
赤い熱気を
連れ居りて
飲みの席にも
シーサーが鳴き

（『六月の六角』（出版未定））

選曲は白

iPod
選んだ曲の
通勤と
目に見ゆ画像が
睦まずにおり

（『六月の六角』（出版未定））

雨花は水

花と犬
梅雨の合間に
日和見て
通りの脇に
色を飾らん

（『六月の六角』（出版未定））

夕待は灰

バスを待つ
ぬるき空気の
停車場に
潜る車体と
ぬめるエンジン

（『六月の六角』（出版未定））

雨後は黒

なの日まえ
勇んで呑んだ
門仲も
雨の滴で
酔いは冷めやり

（『六月の六角』（出版未定））

曇空は灰

傘がない
そぼ降る雨に
濡れながら
あの人のうたを
繰返しながら

（『六月の六角』（出版未定））

唸寝は白

夢現
唸る列車の
風を差し
眠る空気の
虚を抱き居り

（『六月の六角』（出版未定））