2010年5月9日日曜日

初校と小話

─ ねえ、Nさん、最近こゆきちゃん見ないけど、どうしたの?
─ 風邪引いちゃって。暫く家から出てないんですよ。いやぁ、困っちゃって。この前の日曜日。その前の晩から少し、咳が出てはいたんだけどいつものように『笑っちゃダメよ』の創刊号がはじまる頃に散歩に行きたくてそわそわしだしたんで、連れて出たんですよ。そしたら急に咳がひどくなって。ちょっと行きかけて帰って来て。それから病院。折角買ったばかりのピンクのパーカーをお披露目しようと思ってたのに…
─ あらぁ、そうなの。気を付けてね。

というやり取りを偶然、三鷹の飲み屋で聞いた犯罪者がある警察署の取調室で、

─ 毎週日曜日、大体10時くらいにね、あの三鷹のマンションに住んでるNさんちのこゆきっていう娘が決まって、親に連れられて I 公園の方へ散歩に行くんですよ。この前も見たんですよ。風邪引いてました。ひどい咳をしてましたから。歩くのも辛そうだった。あの日は可愛いピンクのパーカーを着てましたよ。
状況証拠にしかなりませんけど、僕がこの前の日曜の10時前後に千葉の方にいる事は、これが本当なら不可能じゃないですか。

すぐに聴取に三鷹にとんだ刑事が帰るなり、容疑者に、

─ こゆきって娘にあって来たぞ。お前の言った通り、日曜日10時頃に確かに I 公園の方に散歩に行ったそうだ。ピンクのパーカーで。
─ そうでしょう。
─ で、K、こゆきちゃんはいくつぐらいの娘に見えた?
─ 見た目じゃ難しいですけど、お父さんと一緒にいつも連れ立っていてまだあどけないので、よっつかいつつってとこですかね。

で、ここでピンクのパーカーをきたこゆきが、

─ 逮捕チュル〜、わん!

という、ペット落ちの小話はいかがでしょう(笑)



教科書の初校の校正が終わって、一段落の夜。