夏まだき
かけ上がる階段
発車ベル
開いた扉
夏の冷風扇
(『六月の心』(出版未定))
夏の風
雨の谷間に
機を図り
桜桃(もも)の匂いと
共に混じりて
(『メス犬のひとりごと』(出版未定))
文脈も
文脈のなかにありけり
テクストを読む
その壮大さ
(『六月の心』(出版未定))
飲みながら
昨日のうたを
忘れけり(笑)
梅雨の渋谷の
我らが一期
(『教室のうた 1』(出版未定))
初心に
やれ
帰れという
その
初心は
初心の
ときには
分からじや
(『酔っぱらいのうた』(出版未定))
夕まぐれ
うしろを歩く
那のはなが
宵にまぎれて
風に揺らぎて
(『飼い主の戯れ言』(出版未定))
あずまやの
池で飼われし
折りにみつ
錦の鯉の
瀧を昇るや
(『アルトワの妙』(出版未定))
あさぼらけ
湾に臨んだ堤防で
波をみる父
地球(ほし)の脈取り
(『セニョール・ホニの涙』(出版未定))
色に酔う
梅雨の雫の花びらに
淡い口づけ
終わらぬ温さ
(『R−18の疑問』(出版未定))
空の色
都市(まち)の匂いが
見えずとも
苦きコーヒーの
味の広がる
(『スペイン恋歌』(出版未定))
赤黄色
どんな国かときかるれば
赤黄色なり
食事や旗や
(『スペイン恋歌』(出版未定))
光の前に生まれし
ロゴスは
肉体の軛(くびき)を
気にも留めずに
(『死刑囚のつぶやき』(出版未定))
神田川
梅雨の重きに
ヘドロを湛え
黒き川面に
岸辺は若緑(みどり)
(『六月の心』(出版未定))
飲んじゃダメ!
とはまさか言わないけれど
かまって欲しい
酔うその前に
(『メス犬のひとりごと』(出版未定))
神に向かい
天を出しゆく
われの手は
何の故あり
それに従う ?
(『セニョール・ホニの涙』(出版未定))
いつぞやの
宵の薄闇
忘られじ
369(弥勒)の招き
涅槃の丘に
(『横尾探偵の怪』(出版未定))
冒険王
赤と緑の不安を越えて
時のY字路
君を待つ家
(『横尾探偵の怪』(出版未定))
梅雨の間の
陽に照らされて
不機嫌に
どこまでもは続かない
線路
(『六月の心』(出版未定))
曇り空
コントラストの
単調が
地平とここの
アスファルトさへ
(『セニョール・ホニの涙』(出版未定))
あなたもね
彼と一緒で
ものごとを
斜めから見るね、
と鬼籍の師
(『セニョール・ホニの涙』(出版未定))
梅雨まだき
窓より来る涼風の
騒音(おと)を伴い
色を帯びたる
(『セニョール・ホニの涙』(出版未定))
生き死にの
次の日のかの
場所を行き
そそくさと歩く
流れに乗って
(『セニョール・ホニの涙』(出版未定))
悠々と飛びゆく
青の中
そこは
白き意識の頭上に浮かぶ
(『六月の心』(出版未定))
想像する
感じる力を
探し居る
そばにか弱き小犬の寝息
(『飼い主の戯れ言』(出版未定))
待てやそれ
為さざる内に
ひと呼吸
さすれば怒りも
幾ばくか鎮まらん
(『酔っぱらいのうた』(出版未定))
まわれ
くるくるくる回れ
お空見て
回れやまわれ
くるくるくると
(『六月の心』(出版未定))
待ち侘びつ
居らぬ我らを
待ち侘びつ
帰る我らを
待ち侘びつ居り
(『飼い主の戯れ言』(出版未定))
雨 滴
雨 水 雨雨
滴 雨
雨 雨あめ 我
傘の内
雨
(『武蔵野』(出版未定))
お好み焼きを切りながら
教え子の話を聞き居り
ヘラがコツコツ
(『教室のうた 1』(出版未定))
閉じてゆくものへの
喝采限りなく
終わりある
その救いと悲哀
(『戎の憂鬱』(出版未定))