戻り行く
時空を裂いて
遥かな記憶
酒のしずくに
熱を感じて
(『酔っ払いのうた』(出版未定))
残る酒
頭をもたげて
息を吐く
寒空の風に
酌するつもりで
(『十一月は準備して』(出版未定))
花は咲かせる、から
花は咲く、そして
花はあるのだ、へと
(『教室のうた 1』(出版未定))
黄色が秋
澄み渡る朝に
映えるは黄色
秋の黄色
黄色
(『十一月は準備して』(出版未定))
脇行く男学生(おとこ)の
「…きれい…」
の先は
青空しょった
銀杏の鮮やか
(『教室のうた 1』(出版未定))
昼毎に
微かに違う
固さ噛み
君の手付きを想う
飯粒
(『十一月は準備して』(出版未定))
薄くもり
淡い光の
静けさに
浅い疲れを
微睡み眠り
(『十一月は準備して』(出版未定))
焼き上がる
白の器に
よそわんは
酒の滴か
言葉の水か
(『十一月は準備して』(出版未定))
名にし負う
かなたの天才
来たり見て
そのキャンバスに
誰を探すや
(『ピカソの憂鬱』(出版未定))
正気なり
その正気なる
有り様が
正気の沙汰に
有らざるや、いかに
(『十一月は準備して』(出版未定))
同じ空
昨日も明日も
青い空
見るも見ずとも
死ぬも生きるも
(『セニョール・ホニの涙』(出版未定))
今日が冬の
始まりなりと
繰り返す日の続いては
冬ぞ来るなり
(『十一月は準備して』(出版未定))
振り向けば
そこにあるのに
気付かない
人に
叩いて起こされるまで
(『セニョール・ホニの涙』(出版未定))
青空
歩く
手に花
桶に水
墓石
線香
合掌
涙
想い出
(『十一月は準備して』(出版未定))
血の道は
他人身内は
世も知れず
長い流れの
赴くがまま
(『十一月は準備して』(出版未定))
秋に咲く花を見て
春を想い
冬を越える力で
春を待つ
(『十一月は準備して』(出版未定))
作品は
手を離れたら
歩き出す
心配要らぬ
心配要らぬ
(『十一月は準備して』(出版未定))
曲がり角
曲がったら、ふと
冬の気配
木枯らしの舞う
枯れ葉の舞台
(『メス犬のひとりごと』(出版未定))
江戸にある
酒をさまざま
呑み尽くし
江戸の酒屋の主に
誉めらる
(『十一月は準備して』(出版未定))