志ん生の道は蕀よ
そを歩く
人が蕀を薔薇に変えても
(『ひとつの計画』(出版未定))
花の道
行き過ぐ時を
彩りて
眼の縁より
零れし虹色
(『四月の漆黒』(出版未定))
志ん生の後の
肥やしを耕して
実った先は
酒の報いか
(『ひとつの計画』(出版未定))
願掛けて
叶う酒なら
辞めようと
誓ったその日に
祝い酒かな
(『酔っぱらいのうた』(出版未定))
志ん生の
指の動きを
眺めたく
醜い酒を
試しに飲んで
(『酔っぱらいのうた』(出版未定))
むじゅうりょく
うえもしたも
みぎもひだりも
まんなかだって
ねむってしまえば
(『メス犬のひとりごと』(出版未定))
「形」という
知の集約に
戸惑いつ
形なき身の
我が身の形よ
(『ひとつの計画』(出版未定))
黒の土地を
歩く
さあ
言葉は置いて
無言の襞を
なぞり
辿りて
(『メス犬のひとりごと』(出版未定))
世界という
板の狭さに
驚いて
掌の真を
吹き散らしたく
(『ひとつの計画』(出版未定))
精神の
端に絡んだ
解れ糸
解こうとしたら
指に縺れて
(『四月の漆黒』(出版未定))
土地という
遠い呪縛の源よ
故郷に化け
我を諭さん
(『ひとつの計画』(出版未定))
右左
揺れる電車の
リズム取り
合わせよったら
間にゃわんぞ
もし
(『ひとつの計画』(出版未定))
言いたいのだ
表したいのだ
しかし
伝えられない
伝えきれない
今
(『ロゴスの続き』(出版未定))
昨日より
低うなりよる
ハードルの
白きラインが
股下を過ぎ
(『ひとつの計画』(出版未定))
あさぼらけ
百キロ先の合宿所
すべての道が
ローマへと続く
(『ひとつの計画』(出版未定))
全面の
光る思い出
四万十の
弾く滴も
流れる水も
(『ひとつの計画』(出版未定))
トラックは
運びに運ぶ
汗みどろ
親父の声と
血を飲む橘
(『ひとつの計画』(出版未定))
旗を持ち
歩く下校の
登り道
あの坂道は
どこまで続く
(『ひとつの計画』(出版未定))
食事時
お留守番前
昼寝中
こゆきが犬に
なるときそれは
(『飼い主のひとりごと』(出版未定))
おばば言う
肥料にまみれ
死んだ子の
その叫び音が
海鳴りと鳴り
(『ひとつの計画』(出版未定))
帰り道
臨む崖下
落つる友
死ぬる写真は
セピアにできず
(『ひとつの計画』(出版未定))
ガードレール
越した向こうに
春の草
緑に惹かれて
口にしてみる
(『ひとつの計画』(出版未定))
昇る足
アキレス腱の
その角度
汗の匂いと
海の匂いが
(『ひとつの計画』(出版未定))
与村井の
浜の景色は
静やかで
下るお子らの
足も忍んで
(『ひとつの計画』(出版未定))
死ぬときは
想い出の数
数えてよ
何度も何度も
思い出してよ
(『ひとつの計画』(出版未定))
薄曇り
たれ込む雲の
その向こう
あるは太陽
想うは誰そ
(『ロゴスの続き』(出版未定))
春つばめ
黒尾の描く
その円の
円の向こうに
見える夏色
(『四月の漆黒』(出版未定))
夕まぐれ
白き心の
語る目は
この胸の壁に
色を残して
(『四月の漆黒』(出版未定))
ヘーゲルの口づけ
赤人の囁き
この耳元で
今
聞こえる
(『ロゴスの続き』(出版未定))
暫しの別れ
熱き涙も
行方を知らず
喉を越す酒が
泣き
(『四月の漆黒』(出版未定))
熟れた腰を
たゆませ歩く
OLよ
花の命も
果実の時期も
(『四月の漆黒』(出版未定))
春日差し
昼寝のあとの
脳みそは
かすみたなびく
歌景色かな
(『四月の漆黒』(出版未定))
桃色の
後の緑は
幼くて
空の淡さに
染まず滲まず
(『四月の漆黒』(出版未定))
重ね行く
杯のリズムや
酔い良いに
一夜人世の
酒の幻
(『酔っぱらいのうた』(出版未定))
客観を求めた先に
主観立ち
主観の終が
客観ならば
(『ロゴスの続き』(出版未定))
焼酎は
お湯や水割り
日本酒は
燗がよろしや
ラムストレート
(『酔っぱらいのうた』(出版未定))
宜長や
西行法師はさもあらん
やれ犬どもも
花に惹かれて
(『四月の漆黒』(出版未定))
君とした
百代の契り
この春も
花の下にて
色と眺めん
(『四月の漆黒』(出版未定))
顔という
人の装置に
騙されて
尻尾で語る
犬の迷いよ
(『飼い主の戯れ言』(出版未定))
あの色は
桜の色か
ま白にて
烏がかあで
薄闇に映え
(『四月の漆黒』(出版未定))
蝶が舞う
空気の襞に
羽を刺し
その鱗粉を
空に滲ませ
(『四月の漆黒』(出版未定))