蝉の出す
重層低音背に受けて
空間に舞う
ペンのスタッカート
(『七月の質』(出版未定))
遠き地の
味を誠に味わえば
風に添えらる
サフラン黄の
(『七月の質』(出版未定))
七色の光を垂らし
夏の黒
弾ける音も
闇に滲みて
(『七月の質』(出版未定))
夏曇り
照らぬ陽のもと
なほ冷めぬ
残る熱気を
持て余しおり
(『七月の質』(出版未定))
雨も止み
拭うハンカチ
せわしくて
あれよあれよと
夏来にけらし
(『七月の質』(出版未定))
梅雨明けの
夕の曇りの湿り気の
露を集めて
グラスの面に
(『七月の質』(出版未定))
夏の風
緑の球に
反射して
万世を巡りて
月夜の闇へ
(『七月の質』(出版未定))
扇風機
くるくる回る
羽の間に
時々見える
あなたが好きの目
(『飼い主の戯れ言』(出版未定))
正午前
緑の白を反射し居り
涼やかなる
やや暑さの盛りの
(『七月の質』(出版未定))
人ひとりの
鼓動と
息の出入り
生き方の妙
生活の柄
(『七月の質』(出版未定))